◆70代 女性
初診日 201×年8月11日
左膝裏の痛みと下腿のむくみ
心房細動、粗動のため8月7日にカテーテルの手術を受けた。その際、動かないように固定され、手術後も翌日昼まで固定されていた。特に膝を曲げてはいけないと言われ、脚をずっと真っ直ぐに固定されていたのが非常にきつかったとのこと。8日夕方に院内を歩いたときに左膝裏に痛みが出た。
現在も同じくらい痛みがあり、下腿がむくみ、それにより足をつくと両足首にズーンとした痛みが出る。手術の後から37℃の微熱が続き、心拍数が90回/分以上になっている。病院から痛み止めが処方されているが、嫌で服用していない。湿布はしている。
二便正常、食欲あり、睡眠の質も良い
細身。旦那さんの車で来院し、足を引きづりながら歩いている。下腿はむくんでいるが、顔や上肢はむくんではいない。顔色はいい。唇や爪が暗色。
舌診: 暗絳、歯痕、舌下静脈怒張、薄白苔
脈診: 右滑数、左弦数、尺中沈
膝裏の痛みは、脚を固定されたことにより膀胱経の気血の流れが滞り発症。下腿のむくみは心臓のオペの影響で、もともと腎虚の体質であったせいかむくみという症状として現れた。足首の痛みはむくみのせいと考え、むくみがなくなれば痛みがとれると予想。微熱、脈数は陰虚による虚熱によるものと考えます。
・通経止痛 … 膀胱経の気血の滞りを解消して痛みを止める
・滋陰清熱 … 腎陰を補い熱を冷まし、腎の力を助けて体の余分な水分を排泄させる
・活血 … 血の巡りを良くすることで、リンパの巡りも改善させる
左委中、左合陽、左崑崙、丘墟
腎兪、太谿、照海、陰陵泉
三陰交、中封、曲泉
【2診】 8/15
自転車で来院。左膝裏の痛みはなくなり、むくんでもいない。普通に歩けるが、足をついたときに右足がしんどく感じる。痛みがないので趣味の陶芸を再開したとのこと。ただ、微熱は続いていて、心拍数も90くらいある。
滋陰清熱と活血の治療を行う。心臓の影響も考え内関も取穴。
痛みがないということで本人の希望により治療終了。腎陰を補う乳製品や豚肉、鶏卵などを摂るようお勧めする。
9/26に起床時に右臀部に痛みがでるということで来院。膝裏痛やむくみはない。心拍数が多く、脈も浮弦を呈していたので、やはり腎陰虚が気になりましたが、腎陰虚の治療にはあまり興味を示していただけなかった(定期的な通院が必要)ので、今回も右臀部の治療で終了となりました。
鍼灸治療が鎮痛効果だけでなく、血流やリンパの流れも改善する可能性がある症例になります。この患者さんの心房細動・粗動は心腎不交によるものではなかったかと憶測します。そうであれば今後も腎陰をしっかり補って過ごしていただければと思います。
埼玉県川口市の中医学専門針灸治療院
【石上鍼灸院】