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埼玉県川口市の中医学専門はり灸治療院石上鍼灸院ブログ

中医学専門はり灸治療院

中医学は数千年前から臨床現場の経験を積み重ねて理論体系化されている医学です

◆舌診についてD 「歯痕」

2016年8月29日(月) 雨

こんにちは、埼玉県川口市の中医学専門石上鍼灸院です。

今日の夜から明日の朝にかけて台風10号が近づくようです。
台風がUターンしてくるという話はあまり聞いたことがありませんし、しかも強くなって帰ってくるなんて。
今日は皆さん早めに帰宅しましょう。

さて、今日は舌診の第5弾です。
「歯痕(しこん)」についてお話しします。

歯痕歯痕とは、その字の通り「歯のあと」です。
写真のように、舌の両側にギザギザとした歯の痕がみられるものをいいます。
多くは胖大舌といって舌が大きくなってしまい、常に歯に当たっているので、痕がくっきりと残ってしまうものです。

かなり多くの患者さんにみられます。

診断意義としては、@脾気虚が考えられます。
脾気虚とは、下痢をしやすかったり、便が軟便傾向、食後にだるくなったりお腹がはりやすいなどの胃腸が弱い方にみられます。
胃腸が弱いために、きちんとエネルギーを産生できず、疲れやすい、やる気が出ないなどの気虚の症状があらわれます。
また、脾は湿をにくむので、水分代謝が悪くなりむくみやすくなったり、雨や台風などの湿度が高いと体の調子が悪くなったりします。
日本人には脾の不調が多いと言われていますので、多くの方にこの歯痕はみられます。

もう一つの意義は、A陽虚水停です。
疲れやすいという気虚の状態が、陽虚に進むこともあります。
これは、陽という温める力が弱っているということなので、一番の症状は冷えです。
寒がりで手足が冷える、他に便が下痢になりやすい、小便が透明で量が多かったりします。
陽虚とは窯の火が弱いようなものなので、水を温めて移動させる力がありません。
そのため、水が停滞してしまい、むくみが出て、舌も大きくなるので歯痕があらわれます。

つまり、歯痕は気虚や湿が停滞しているときにあらわれ、疲れやすい人やむくみやすい人によくみられます。

どんな参考書でも、以上のような内容が記載されています。
ただ、臨床では歯痕なのに、舌苔が細かったり、絳舌のように陽虚とは正反対の舌色である場合もよくみられます。
そういった場合、私はこのように考えます。
歯痕があれば、時間軸でかなり以前に気虚の状態があったのだろうと。
それが進み、現在は気血不足により舌が細くなったり、陰虚により絳舌になっているのではないか。
このように現在の状況だけではなく過去も含めてざっくり広く考え、そこに問診でお聞きした情報や脈を診て、総合的に病証を判断します。
舌を診ただけで患者さんの全てが分かるというのは余程の達人で、私には到底無理なので全ての情報から診断するようにしています。
皆さんも舌の情報だけでは体の状態を全て判断できませんが、ざっくりとした参考にはなります。
歯痕があれば、体が疲れているのかな、胃腸の調子が悪いのかなと考え、暴飲暴食をせず胃腸を休めたり、少し仕事量を調節して体を休めたりしてくださいね。

実際、私も軽い歯痕がありましたが、胃腸の調子が良くなると歯痕もなくなっていました。
ただ、歯痕が深い場合はなかなかとれない場合もあります。
また、生まれつきの方もいるようです。
体調管理の一つとして、朝顔を洗ったついでに舌もチェックしていきましょう。



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