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埼玉県川口市の中医学(中国伝統医学)に基づく施術を行っている鍼灸院です。

〒332-0023 埼玉県川口市飯塚3-7-28TEL:048-446-9860

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胃痛・心窩部痛

みぞおち辺りがズキズキする痛みって辛いですよね。暴飲暴食や急性胃炎などで起こります。私の周りでもストレスによる十二指腸潰瘍になってしまった友人が何人かいます。中医学からみた心窩部痛と西洋医学からみた心窩部痛についてお話します。

現代医学からみた「胃痛・心窩部痛」

痛みには内臓痛と体性痛の2つがあります。

◆内臓痛
【原因】管腔性器官の伸展、収縮、牽引、化学的刺激、血行障害および血管の牽引
【性質】間欠性、疝痛のことが多い。中心線上にくることが多い

◆体性痛
【原因】壁側腹膜、腸間膜、横隔膜への炎症、化学的刺激
【性質】持続性、疼痛は限局性で部位は明確


胃痛・心窩部痛を起こす主な疾患


  • 食道裂孔ヘルニア
これは横隔膜ヘルニアの一種で食道裂孔から胃の一部が縦隔へ脱出する状態です。胃液の逆流による高度の胸やけ、嘔気・嘔吐、嚥下困難が随伴して起こります。

  • 急性胃炎
胃粘膜の急性、慢性、局所あるいはびまん性の炎症性疾患です。感染症やストレスなどの内因性のものから、暴飲暴食や食物アレルギー、ウイルスなどの外因性のものが原因で起こります。症状としては急に発症し、上腹部痛、上腹部膨満感、嘔気・嘔吐、食欲不振、胸やけ、ときに下血・吐血を起こすときもあります。

  • 消化性潰瘍
胃あるいは十二指腸粘膜が塩酸とペプシンの作用による消化作用をうけて潰瘍を形成する疾患です。潰瘍発生の要因は塩酸などの攻撃因子と粘液などの防御因子のバランスの破たんによるものですが、現在ではヘリコバクター・ピロリ菌が消化性潰瘍の原因としてあげられています。胃潰瘍では70~75%、十二指腸潰瘍では95%にピロリ菌が陽性だといわれています。十二指腸潰瘍では空腹痛・夜間痛が起こることが多く、胃潰瘍では食後1時間後くらいに起こる早発痛・2~3時間後に起こる遅発痛がみられます。

  • 胆石症
胆石が胆のう頚部に嵌頓することで起こります。一般に疝痛、発熱、黄疸の3徴候を呈し、腹痛は脂肪性食物の摂取によって惹起されることが多いですが、発熱、黄疸を欠くことも少なくありません。急な不快感、膨満感ではじまり、耐えがたい激痛となります。最初心窩部中央に起こり、右季肋部に移動し右鎖骨上部へも放散します。

  • 胆のう炎
胆汁のうっ滞が原因となります。胆石にもとづくものが90%ぐらいといわれています。疼痛は心窩部から下腹部へ放散します。胆のうの腫脹、圧痛があります。

  • 急性膵炎
原因はアルコール、特発性、胆石症などがあげられます。腹痛は激痛で、膵臓を中心として左方、右方、また左右の胸部、とくに背部に放散することが多くみられます。

中医学からみた「胃痛・心窩部痛」

器質的なものより機能的病変において、はり灸治療は良い効果があります。

胃腸の働きに関係する臓腑の機能

【脾は口に開竅す】
 口は脾の外竅であり、脾臓の精気は口に通じ、口腔は消化道の最上端なので、飲食・味覚と脾の運化機能とは密接に関係しています。脾気が健やかで盛んであれば、食欲が旺盛で味覚も正常となります。

【脾は運化を主る】
 脾には飲食物を精微に変え、その精微物質を全身に転輸する働きがあります。運化機能には具体的に2種類あり、1つは水穀精微の運化です。脾は胃が飲食物を消化吸収するのを助け、それによってできた精微物質(栄養成分)を脾から心肺に輸送し、さらに心肺の働きによって五臓六腑の各器官組織に送って、全身の組織に栄養を与える働きをします。もう1つは水湿の運化です。脾には体内の水液を運んだり排泄したりする作用があります。

【脾は意を臓す】
 脾と思考・思慮などの思惟活動が密接に関係していることを表した定言です。思慮が過度になったり、ある種の挫折感を味わったときに生体の正常な生理活動が損なわれ、特に脾気を害して疏泄ができなくなり、食欲不振・お腹の張り・めまいなどの症状が起きます。

【脾は胃に合す】
 脾と胃とは経脈が相互に絡属し合うことによって表裏の関係を構成しているので、生理・病理上密接な関係にあります。胃は受納を主り、脾は運化を主り、両者は協働して飲食物の消化吸収と精微物質の輸送を完遂します。ただし、脾と胃とでは機能上異なる点もみられます。胃は納を主るが、脾は化を主り、胃は降を主るが、脾は昇を主り、胃は潤を喜び燥を悪むが、脾は燥を喜び湿を悪む、などです。脾と胃は互いに協力し合って生体の相対的バランスを維持します。

【胃は受納を主る】
 胃には水穀を受け入れ納める機能があります。胃の受納機能が正常であれば、食欲は旺盛になります。逆に胃気が虚すと、正常に水穀を受納できなくなるため、胃脘部の脹満・食欲不振・げっぷ・嘔吐などが生じます。

【胃は腐熟を主る】
 胃は胃気の働きによって飲食物を消化し、粥状に変化させる働きがあります。胃が腐熟機能を失うと、飲食物が消化されずに胃中に停滞するため、胃脘部の閉塞悶脹感・げっぷの頻発、または食物臭の混じったげっぷがでる・食欲不振などの症状が現れます。

【胃は降濁を主る】
 胃には消化の過程を経た飲食物を、胃気によって腸管に下降させる機能があります。胃は降濁を主り、脾は昇清を主るが、両者が協調し協働することによって飲食物の消化吸収が完成されます。もし胃気が下降しなければ胃脘部の脹満感や疼痛・食欲減退・嘔吐などの症状が現れます。

【肝は疏泄を主る】
 肝には気を疏通・発散・昇発させる機能があるので、脾胃の運化機能を促進する働きがあります。脾による水穀の精微の運化、胆による胆汁の排泄は、どちらも肝気の疏泄作用によるものです。

弁証施治


  • 脾胃虚寒
 気虚の体質あるいは慢性病による消耗などで、脾胃の陽虚をきたして内寒が生じ、胃が温養されないために発生します。

【症状】 心窩部の持続性の疼痛、押さえたり温めると楽になる、空腹時に疼痛が増し食後に軽減する、冷えると増悪する

【随伴症状】 食欲不振、摂食量が少ない、水様物の嘔吐、寒がる、四肢の冷え、水様便、疼痛は増減しながら数年を経過することがある、重症では吐血や血便をみる
(気虚があきらかな時)
 顔色につやがない、痩せる、倦怠感、食欲不振、摂食量の減少、甚だしいときは下腹部の下墜感、慢性の泥状便、脱肛など

【舌診・脈診】 舌質は淡嫩、辺歯痕、舌苔は薄白で滑、脈沈遅あるいは濡や弱
【治法】 温中健脾、散寒止痛
【良い食材】 生姜、らっきょう、ねぎ、にら、胡椒、唐辛子、黒砂糖、サケ、マス、アジ、もち米、山いも、じゃがいも、干ししいたけ、栗、鶏肉、牛肉、田ウナギ、エビ、イワナなど
【鍼灸治療代表配穴】 脾兪、胃兪、中脘、神闕、気海、関元、天枢、足三里、命門、太白など

  • 寒邪犯胃
 寒冷にさらされたり生ものや冷たいものを多量に摂取したことなどにより、寒邪が裏に入って脾胃を侵したために生じます。

【症状】 突然に生じる締めつけられるような強い疼痛、温めると軽減する、痛むときに悪寒をともなう

【随伴症状】 つばやよだれが多い、口渇がない、熱い飲み物を好む

【舌診・脈診】 舌苔が白、脈緊
【治法】 温中暖胃、散寒止痛
【良い食材】 米、もち米、生姜、にら、みょうが、香菜、唐辛子、黒砂糖、鶏肉、アジ、マス、サケなど
【鍼灸治療代表配穴】 胃兪、中脘、足三里、神闕など

  • 肝火犯胃
 情緒の抑うつによる肝うつ化火・辛辣な食物や味の濃厚な食物の嗜好による胃熱・温熱性の薬物の過用による胃熱・六淫の邪の化熱入裏などにより、火熱が脈絡を壅阻して気血を失調させたために発生します。

【症状】 心窩部の強い灼熱性疼痛、圧痛、寒冷を好み温暖を嫌う

【随伴症状】 胸やけ、呑酸、口渇、水を飲みたがる、顔面紅潮、目の充血、口が苦い、いらいら、怒りっぽい、便秘、甚だしいときは苦い液の嘔吐あるいは吐血や血便

【舌診・脈診】 舌質は紅、舌苔は黄、脈弦数
【治法】 疏肝瀉熱、清胃調中
【良い食材】 あわ、きゅうり、にがうり、なす、トマト、白菜、セロリ、せり、すいか、バナナ、りんご、さとうきび、豆腐、緑茶など
【鍼灸治療代表配穴】 肝兪、胃兪、中脘、期門、内関、足三里、行間、陽陵泉、内庭など

  • 胃陰虚
 慢性の胃病による陰血の消耗・熱性病による津液の消耗などによって、胃が濡養されず脈絡が拘急するために発症します。

【症状】 心窩部の灼熱性鈍痛

【随伴症状】 口が渇くが飲みたくない、手のひらと足の裏のほてり、口や唇の乾燥、胸やけ、空腹感があるが食べたくはない、しゃっくり、便が硬い、甚だしいときは嚥下困難や嘔吐

【舌診・脈診】 舌質は紅で乾燥、舌苔は少ないか無苔、脈が弦細あるいは弦細数
【治法】 養陰和胃止痛
【良い食材】 あわ、小麦、大麦、きゅうり、トマト、松の実、白きくらげ、白ごま、卵、牛乳、豆腐、ゆば、鴨肉、豚肉、豚足、貝類など
【鍼灸治療代表配穴】 中脘、三陰交、太谿、復溜、廉泉、胃兪、足三里など

  • 肝気うっ結
 内傷七情で肝気がうっ結し、肝の疏泄が不充分になったために胃の和降が失調し、胃気が阻滞されて通じないために発生します。

【症状】 心窩部の脹った感じを伴う痛み、疼痛が両脇に放散する、胸苦しく痞塞感がある

【随伴症状】 ため息が多い、食欲不振、摂食量が少ない、ゲップ、呑酸、嘔吐、すっきりと排便できない

【舌診・脈診】 舌苔は薄白あるいは薄黄、脈弦
【治法】 疏肝理気、和胃止痛
【良い食材】 そば、大根、えんどう豆、らっきょう、ゆず、オレンジなど
【鍼灸治療代表配穴】 肝兪、期門、内関、足三里、太衝、胃兪、中脘など

  • 血瘀
 気滞が持続して瘀血を生じたり、胃痛が慢性化して「久痛入絡」し、瘀血が停滞するために発生します。

【症状】 上腹部のはりで刺すようなあるいは引き裂かれるような固定性の痛み、圧痛

【随伴症状】 吐血、テール便

【舌診・脈診】 舌質は暗紫あるいは瘀斑、脈渋
【治法】 活血化瘀、理気止痛
【良い食材】 チンゲン菜、にら、らっきょう、玉ねぎ、レモン、みかん、ゆず、酢など
【鍼灸治療代表配穴】 膈兪、血海、三陰交、胃兪、中脘、足三里、中封、間使など

  • 食滞
 暴飲暴食により食物が中焦に停滞するために発生します。

【症状】 暴飲暴食の既往がある、上腹部の膨満感と疼痛、圧痛

【随伴症状】 腐酸臭のあるゲップ、食べ物のにおいを嫌う、悪心、嘔吐、吐くと疼痛が軽減、すっきりと排便できない

【舌診・脈診】 舌苔は厚膩、脈滑
【治法】 消食導滞、和胃止痛
【良い食材】 そば、おこげ、大麦、大根、かぶ、ミカンの皮、らっきょう、なた豆、ジャスミンなど
【鍼灸治療代表配穴】 胃兪、中脘、内関、足三里など

お腹の痛みに効く民間療法

◆よもぎの煎じ汁
 陰干しにしたよもぎを3g程度、500~600mlの水に入れ、半量になるまで煎じます。これを1日分とし、3回に分けて飲みます。よもぎには下痢を止める作用があるので、下痢を伴うお腹の痛みに効果があります。

◆きくらげの甘煮
 15gのきくらげを水で戻し、これに300mlの水と60gのざらめを加え、よく煮込んでから食べます。きくらげには、便通をよくしたり潰瘍を改善したりする効果があるので、便秘や血便を伴う腹痛の時にお勧めです。

◆梅酢のお湯割り
 小さじ1杯の梅酢を適量のお湯で割って飲みます。梅酢の代わりに、梅肉エキスや梅干しを使っても良いでしょう。梅には殺菌作用と整腸作用があるので、傷んだ物を食べてしまってお腹が痛むときに効果的です。
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